「GKなんだから、もっと声を出せ!」。そう言われても、何をどう言えばいいのかわからないGKはたくさんいます。大きな声を出すだけでは、味方は動けません。大切なのは「だれに」「何を」「いつ」伝えるかです。
GKが味方に指示を出すことを、サッカーでは「コーチング」と呼びます。この記事では、私たちKEEPIX TEAMがすすめるGKのコーチング(声かけ)の基本と、チーム練習の中でできる練習メニューを7つ紹介します。小学生から高校生まで使えるように、それぞれに「やさしくする方法」と「むずかしくする方法」ものせています。
GKのコーチングが大切な理由
GKはピッチの一番うしろにいて、試合全体を見わたせるただ一人の選手です。前を向いている味方には見えない相手の動きも、GKからはよく見えます。その情報を声で伝えることで、ピンチになる前に危ない場所をうめることができます。
いいコーチングができると、シュートを打たれる場面そのものを減らしやすくなります。セービングでボールを止めるのと同じくらい、「シュートを打たせない」ことはGKの大事な仕事です。また、声を出すことで自分の集中も切れにくくなります。
コーチングの基本
- 名前を先に呼ぶ:「おい!」ではなく「〇〇(名前)、」のように名前から始める。だれへの指示かがすぐにわかる。
- 短く、はっきり:「マーク!」「上げろ!」「ナイス!」など、一言か二言で伝える。長い説明は試合中には届かない。
- 早めに伝える:ピンチになってからではおそい。ボールが動いている間に、次の危険を予想して声をかける。
- チームで言葉をそろえる:「キーパー」「クリア」「ターン」など、同じ言葉を同じ意味で使う。練習の前に確認しておく。
- ほめる声も出す:「ナイスカバー!」「いいよ!」とほめる声は、味方を安心させ、次のプレーを前向きにする。
- 落ち着いた声で:あせってどなると、味方もあせる。大きな声でも、落ち着いたトーンを意識する。
よく使うコーチングの言葉
- キーパー:自分がボールを取りに行くとき。味方はボールからはなれる。
- クリア:大きくけり出してほしいとき。
- ターン:うしろに相手がいないので、前を向いてよいとき。
- マン(うしろ):うしろから相手が来ているとき。
- 上げろ/ラインアップ:ディフェンスラインを前に上げてほしいとき。
- 寄せろ:ボールを持つ相手にプレッシャーをかけてほしいとき。
言葉はチームによってちがってもかまいません。大切なのは、チーム全員が同じ意味で使えることです。
安全に行うための注意点
- 練習の前に、ジョギングやステップ、軽いキャッチで体をあたためる。
- GKが前に出るときは、必ず「キーパー!」と声を出してから行く。声がないと味方とぶつかる危険がある。
- セービングをともなう練習は、やわらかい芝生かマットの上で行う。頭からとびこまない。
- ボールを持っているGKに、相手がけりにいかないルールをはっきり決めておく。
- シュートは弱いボールから始め、少しずつ強くする。
- 小学生は本数を少なめにし、こまめに水分と休けいをとる。のどを痛めないよう、さけぶのではなく「おなかから出す」声を教える。
GKのコーチング練習メニュー7選
1. 名前よびキャッチ
GKと3〜4人の選手で円をつくり、ボールを手でパスし合います。投げる前に、必ず受ける人の名前を呼びます。GKもフィールドの選手も参加します。チームメイトの名前を、すばやく大きな声で呼ぶくせをつけるウォーミングアップです。
- コーチングポイント:名前は投げる「前」に呼ぶ。相手の目を見て、聞こえる声で。
- やさしくする方法:ボールを1個にし、ゆっくりしたテンポで行う。
- むずかしくする方法:ボールを2個にふやし、円を大きくして声が遠くまで届くようにする。
2. 「キーパー!」コール
ペナルティエリアの中に、コーチが山なりのボールやゆるいパスを入れます。GKと味方のディフェンダー1人が待ちます。GKが取れると思ったら「キーパー!」、取れないと思ったら「クリア!」とさけびます。声を聞いたディフェンダーは、その指示どおりに動きます。
- コーチングポイント:ボールが上がった瞬間に決めて、すぐに声を出す。一度決めたら変えない。
- やさしくする方法:ボールを手で高く投げ、時間に余裕を持たせる。
- むずかしくする方法:相手役の選手を1人入れ、競り合いの中で判断させる。
3. ライン上げ下げゲーム
4人のディフェンダーがペナルティエリアの前に横一列に並びます。コーチがボールを持って前後左右に動き、GKは「上げろ!」「下がれ!」「右!」「左!」と指示を出して、ラインの位置を動かします。ボールの位置に合わせて、ラインをそろえる力がつきます。
- コーチングポイント:一人ひとりではなく、ライン全体に向けて短く伝える。ボールが動き始めたらすぐに声を出す。
- やさしくする方法:コーチはゆっくり歩いて動き、指示の言葉を2つ(上げろ・下がれ)にしぼる。
- むずかしくする方法:コーチがパスをまじえて速く動き、うらへのボールも入れる。GKはカバーの判断もする。
4. マーク確認ゲーム
ペナルティエリアの中に攻撃の選手3人と守備の選手3人を入れます。コーチがサイドからクロスやパスを入れる前に、GKは「〇〇、7番!」のように、だれがだれをマークするかを声で整理します。セットプレーの準備にもそのまま使えます。
- コーチングポイント:ボールが入る前に確認を終える。フリーの相手がいたら、いちばん近い味方の名前を呼ぶ。
- やさしくする方法:攻撃の選手は止まったままにし、GKは落ち着いてマークを確認する。
- むずかしくする方法:攻撃の選手が動き回り、マークを入れかえる。GKはその都度声で修正する。
5. GKの声でしか動けないゲーム
20m×30mくらいのコートで4対4のミニゲームをします。守備のチームは、GKの指示がないと動いてはいけないルールにします。「寄せろ!」「カバー!」「戻れ!」などの声で、はじめてチームが動けます。コーチングが「あるといい」ものではなく、「ないと守れない」ものになります。
- コーチングポイント:名前→指示→ほめる、の順番で。ピンチになる前に先に伝える。
- やさしくする方法:味方は自由に動いてよいことにし、GKの声でボールをうばえたらボーナス1点。
- むずかしくする方法:GKの指示は一言だけに制限し、短い言葉で伝える力をきたえる。
6. うしろからの情報ゲーム
コーチが味方の選手にパスを出し、受ける選手の背中側から相手役が近づきます。GKは「ターン!」(前を向いてよい)か「マン!」(相手が来ている)かを伝えます。受ける選手はGKの声を聞いて、前を向くかボールを戻すかを決めます。
- コーチングポイント:受ける選手にボールが届く前に伝える。相手が近づいてきたら、すぐ「マン!」。
- やさしくする方法:相手役は歩いて近づき、判断に時間をかけられるようにする。
- むずかしくする方法:相手役は来るか来ないかをランダムにし、GKは毎回見て判断する。
7. セーブ後の声かけ
コーチがシュートを打ち、GKがセーブしたあと、すぐに起き上がって次の指示を出します。「クリア!」「右あいてる!」「戻れ!」など、セーブで終わらず、次のピンチにそなえる習慣をつけます。こぼれ球に反応する選手を1人入れると、より試合に近くなります。
- コーチングポイント:セーブのあとはすぐに立ち上がり、まわりを見てから声を出す。
- やさしくする方法:シュートは手で投げる弱いボールにし、セーブも立ったままでできる高さにする。
- むずかしくする方法:シュートを連続で打ち、セーブ→声→構えをくり返す。
練習を組み立てるコツ
コーチングの練習は、「声を出すことになれる(1)」→「判断して声を出す(2・6)」→「チームを動かす(3・4)」→「試合の中で使う(5・7)」の順に進めるのがおすすめです。はじめは声が小さくても大丈夫です。できたときにしっかりほめて、「声を出すといいことがある」と感じてもらいましょう。
また、コーチングはGKだけの練習ではありません。フィールドの選手にも「GKの声を聞いて動く」ことを教えると、チーム全体の守備がよくなります。立つ位置の考え方はGKのポジショニング練習メニュー、英語になりますが、守備の組み立て方はGoalkeeper communication(英語)にもくわしくまとめています。
KEEPIXでメニューを形にする
コーチングの練習は、選手の位置や動きを図で見せるとぐっと伝わりやすくなります。KEEPIXのセッションデザイナーを使えば、ディフェンスラインの位置やマークの関係、GKが声をかける場面を図にして、コーチングポイントといっしょに共有できます。毎日の練習の記録や振り返りにはKEEPIX Diaryが便利です。
もっとメニューを増やしたい人は、GKドリル50選の無料PDF(英語)をダウンロードしてください。毎日のドリルはインスタグラムでも発信中です。ほかの練習メニューはGKドリル一覧にまとめています。
まとめ
- コーチングは「だれに・何を・いつ」伝えるかが大切。
- 名前を先に呼び、短く、はっきり、早めに伝える。
- チームで使う言葉をそろえておく。
- 前に出るときは必ず「キーパー!」と声を出して、味方とぶつからないようにする。
- ほめる声も、落ち着いた声も、味方を動かす大事なコーチング。
- セービングはやわらかい地面で、子どもは本数を少なめに。
よくある質問
GKのコーチングとは何ですか?
GKが味方に声で指示を出すことです。ピッチ全体を見わたせるGKが、マークやラインの位置、前を向けるかどうかなどを伝えて、ピンチになる前に守備を整えます。
声が小さいGKには、どう教えればいいですか?
まずは名前を呼ぶだけの練習から始めましょう。さけぶのではなく、おなかから出す声を教え、できたときにしっかりほめると、少しずつ自信がついて声が大きくなります。
どんな言葉を使えばいいですか?
「キーパー」「クリア」「ターン」「マン」など、短くてわかりやすい言葉がおすすめです。チームによって言葉はちがってもよいので、全員が同じ意味で使えるように練習前に確認しましょう。
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