「1つミスをすると、そのあとずっと引きずってしまう」「失点すると下を向いてしまう」。GKのコーチなら、こんな場面を何度も見てきたと思います。GKは、どんなに上手でも失点やミスをするポジションです。大切なのは、ミスをしないことではなく、ミスのあとにすぐ気持ちを切りかえて、次のプレーにそなえることです。
この記事では、私たちKEEPIX TEAMがすすめる「GKのメンタルをきたえる練習メニュー」を8つ紹介します。メンタルは特別な練習でしか育たないものではありません。ふだんのシュート練習やゲームに、少しだけルールやしかけを足すことで、切りかえの力や自信を育てることができます。それぞれに「コーチングポイント」「やさしくする方法」「むずかしくする方法」をのせているので、GKの年れいやレベルに合わせて使ってください。
なぜGKにメンタルの練習が必要なのか
フィールドの選手は、ミスをしても次のプレーですぐに取り返すチャンスがあります。でもGKは、ミスがそのまま失点につながりやすく、しかもみんなに見られています。だからこそ、GKは「失点したあと、すぐに次の構えができるか」がとても大切です。気持ちが落ちたままだと、次のシュートへの反応がおくれ、声も出なくなり、チーム全体がバタバタしてしまいます。
メンタルの力は、性格だけで決まるものではありません。「ミスのあとに何をするか」を決めておき、練習でくり返すことで、試合でも同じように動けるようになります。英語の記事Goalkeeper Mindset(英語)でも、自信をつける練習を紹介しています。また、声を出すことは気持ちを前に向けるのにも役立つので、GKのコーチング(声かけ)練習メニューもあわせて見てください。
安全に、そして安心して行うための注意点
- 練習の前に、ジョギング・ストレッチ・軽いキャッチングで体をしっかりあたためる。
- セービングは芝生などのやわらかい地面で行い、頭からとびこまない。体の横(太もも・こし・かた)から地面に落ちる。
- 連続シュートは、つかれて動きが雑になってきたら、すぐに休みを入れる。
- ミスをしたGKを大きな声でしからない。コーチは「次!」「今のはよかった」など、前を向ける声をかける。
- 小学生は軽いボールを使い、シュートの強さをおさえる。こわさを感じたら、いつでも止めていいと伝える。
- つらそうな様子が続くときは、練習のあとに1対1でゆっくり話を聞く時間をつくる。
GKのメンタル 練習メニュー8選
1. リセットルーティンをつくる
まずは、ミスや失点のあとにする「リセットの動き」を決めます。たとえば「グローブを1回たたく → 深く息をはく → ゴールの真ん中にもどって構える」の3つです。コーチが10本のシュートを打ち、GKは止めても決められても、毎回このルーティンをしてから次の構えに入ります。いつも同じ動きをすることで、試合でも自然に気持ちをリセットできるようになります。
- コーチングポイント:ルーティンは短く、3〜5秒で終わるものにする。息は「すう」より「はく」を長く。最後は必ず構えで終わる。
- やさしくする方法:シュートの間を長くとり、ゆっくりルーティンをする時間をつくる。
- むずかしくする方法:シュートの間を短くして、すばやくリセットする。チーム練習やゲームの中でも使う。
2. 「次の1本」連続シュート
コーチ2人がペナルティエリアの中の左右に立ちます。1人目のコーチがシュートを打ち、GKがセーブしたら、または決められたら、すぐに2人目のコーチが反対がわから2本目を打ちます。1本目の結果がどうであっても、2本目に集中するのがこの練習の目的です。コーチは「次!」と声をかけ、GKにも自分で「次!」と言わせます。
- コーチングポイント:1本目のことは考えず、すぐに立ち上がって構え直す。2本目の前には必ず止まる。「次!」と声に出して自分に言う。
- やさしくする方法:2本目は下手投げのやさしいボールにする。2本目までの時間を長くする。
- むずかしくする方法:1本目をむずかしいコースにして、2本目をすぐに打つ。3本目まで続ける。
3. 失点からのリスタート
コーチがシュートを打ち、ゴールが決まったら、GKはすぐにボールを持ち(またはコーチが新しいボールを渡し)、エリアの外の「ねらうエリア」にいる味方へ投げます。失点のあと、下を向かずに次のプレーを始める練習です。5秒以内に正確に投げられたら1点、とゲームにすると、楽しく取り組めます。投げ方の基本はGKのフィード練習メニューを見てください。
- コーチングポイント:失点しても顔を上げる。ボールを持ったらまず味方を見る。投げる前に、ねらう場所を決める。
- やさしくする方法:ねらうエリアを大きくして、時間の制限をなくす。
- むずかしくする方法:ねらうエリアを小さくする。味方の近くに守備の選手を1人置く。
4. 自分への声かけ(セルフトーク)
GKが自分に言う「合言葉」を決めます。たとえば、シュートの前は「よく見る」、ミスのあとは「次!」、いいセーブのあとは「よし!」です。シュート練習の中で、コーチが「今の合言葉は?」と聞き、GKに声に出して答えさせます。頭の中で考えるより、声に出したほうが、気持ちを切りかえやすくなります。
- コーチングポイント:合言葉は短く、前向きなことばにする。「ミスしないように」ではなく「よく見る」など、することを言う。
- やさしくする方法:コーチがいっしょに声に出して言う。
- むずかしくする方法:試合形式の練習でも、合言葉を声に出せたかをコーチがチェックする。
5. プレッシャーPK
PKを使って、少しプレッシャーのある場面をつくります。5本のPKで「2本止めたらGKの勝ち」など、点数のルールを決め、まわりの選手に見てもらいます。止められなくても、構え・動き出しのタイミング・こぼれ球への反応ができていたら、コーチがほめます。結果だけでなく、やるべきことができたかを見るのがポイントです。PKの技術はGKのPK練習メニューでくわしく紹介しています。
- コーチングポイント:始める前にルーティンで落ち着く。けるまで動きすぎない。決められても、次のキッカーのときには気持ちをリセットする。
- やさしくする方法:見る人を少なくして、勝ち負けのルールをなくす。
- むずかしくする方法:チーム全員の前で行う。勝ち負けを「サドンデス」にする。
6. 失敗OKチャレンジ
わざとむずかしいボールにチャレンジする時間をつくります。たとえば、とどくかとどかないかのシュートや、少し遠いハイボールです。この時間は「止められなくてOK、チャレンジしたら1点」とルールを決めます。失敗をこわがらずにボールへ向かう気持ちが育ち、試合でも思い切って動けるようになります。
- コーチングポイント:結果ではなく、チャレンジしたことをほめる。セービングは体の横から安全に落ちる。
- やさしくする方法:ボールを少しやさしくして、成功する回数をふやす。
- むずかしくする方法:コースを広げる。2回連続でチャレンジする。
7. 試合前ルーティンづくり
試合の前にする準備の流れを、GKといっしょに決めて練習します。たとえば「ストレッチ → 足元のパス → キャッチング → ハイボール → セービング → 最後に好きなセーブを3本」の順番です。毎回同じ流れで準備をすることで、きんちょうしていても「いつも通り」を感じられます。くわしいメニューはGKのウォーミングアップメニューを参考にしてください。
- コーチングポイント:最後は成功しやすいボールで終わり、いい気持ちで試合に入る。時間は15〜20分を目安にする。
- やさしくする方法:メニューを3つだけにしぼる。
- むずかしくする方法:試合のある日と同じ時間・同じ流れで、練習の日にもためしてみる。
8. 「できたこと」ノート
練習や試合のあと、GKが「今日できたこと」を3つ、「次にがんばること」を1つ書きます。ミスばかり思い出してしまうGKも、できたことを書くと、自分の成長が目に見えるようになります。コーチもひとこと書きそえると、GKの自信につながります。記録にはKEEPIX Diaryを使うと、ふり返りがかんたんです。
- コーチングポイント:できたことは小さなことでOK(「声を出せた」「構えが早かった」など)。次の目標は1つだけにする。
- やさしくする方法:コーチがいっしょに話しながら書く。
- むずかしくする方法:1か月ごとにノートを見返して、のびたところを話し合う。
練習を組み立てるコツ
メンタルの練習だけで1回の練習を使う必要はありません。60〜75分のGK練習なら、メニュー1のリセットルーティンをウォーミングアップのあとに入れ、シュート練習の中でメニュー2〜4を、最後のゲームやPKでメニュー5〜6を使うのがおすすめです。メニュー7は試合の前の週に、メニュー8は毎回の練習のあとに続けましょう。
コーチの声かけも、とても大切な練習の一部です。ミスのあとに「何してるんだ」ではなく「次!」「今の構えはよかった」と声をかけると、GKは前を向きやすくなります。私たちKEEPIX TEAMは、GKがのびのびとチャレンジできる雰囲気づくりが、一番のメンタルトレーニングだと考えています。
KEEPIXでメニューを形にする
メンタルの練習は、ルールや声かけを決めておくと、毎回ブレずに続けられます。KEEPIXのセッションデザイナーを使えば、GK・コーチ・コーン・シュートの動きを図にして、コーチングポイントといっしょに共有できます。練習の記録や「できたこと」のふり返りにはKEEPIX Diaryが便利です。
もっとメニューを増やしたい人は、GKドリル50選の無料PDF(英語)をダウンロードしてください。毎日のドリルはインスタグラムでも発信中です。ほかの練習メニューはGKドリル一覧にまとめています。
まとめ
- GKはミスや失点をするポジション。大切なのは、すぐに切りかえて次にそなえること。
- ミスのあとの「リセットルーティン」を決めて、練習でくり返す。
- 「次の1本」連続シュートや失点からのリスタートで、切りかえの早さをきたえる。
- 合言葉を声に出すと、気持ちを前に向けやすい。
- 結果だけでなく、チャレンジしたことやできたことをほめて、自信を育てる。
- やわらかい地面で行い、頭からとびこまない。コーチはしからず、前を向ける声をかける。
よくある質問
GKがミスのあと引きずらないためには、どうすればいいですか?
ミスのあとにする短い「リセットルーティン」を決めておくのがおすすめです。たとえば、グローブをたたく、深く息をはく、ゴールの真ん中にもどって構える、の3つです。練習でくり返しておくと、試合でも自然に切りかえられるようになります。
小学生のGKにもメンタルの練習は必要ですか?
はい。ただし、きびしくするのではなく、楽しく行うことが大切です。「失敗OKチャレンジ」や「できたこと」ノートのように、チャレンジやできたことをほめる練習から始めましょう。ミスをしたときにしからないことも、とても大切です。
試合前にきんちょうしてしまうGKには、どんな練習がいいですか?
毎回同じ流れで準備をする「試合前ルーティン」をつくりましょう。練習の日にも同じ流れでためしておくと、試合の日も「いつも通り」を感じられます。最後は成功しやすいボールで終わり、いい気持ちで試合に入るのがポイントです。
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